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日別アーカイブ: 2025年9月22日

第21回産業用機械雑学講座

皆さんこんにちは!

TMA株式会社、更新担当の中西です

 

さて今回は

~ニーズの多様化~

 

製品×ソフト×サービス×運用を束ねる“総合設計”へ

かつて産業用機器は「仕様書どおりに、頑丈で、長く動くこと」が価値の中心でした。
いまはそれに加えて、短納期・省人化・エネルギー効率・衛生/規制対応・データ接続・運用支援・環境負荷など、要件が一気に増えています。しかも、半導体・二次電池・食品医薬・物流・データセンター・再エネといった市場ごとの最適が違う。結果として、設計からアフターまでのあらゆる場面で“多様化”が進んでいます。
本稿では、現場で役立つ視点でドライバー→セグメント別ニーズ→設計レバー→提供モデル→運用・KPI→90日アクションを一気に整理します。


1|ニーズ多様化を加速させた6つのドライバー

  1. 需要の波形変化:短サイクルの増設・増産、品種切替の高速化。

  2. 人手不足・技能継承:据付・操作・保全の省人化/自動化が前提に。

  3. 規制と品質保証の高度化:GMP/HACCP/UL/CE/機能安全/SIL…“証跡があること”が商談条件。

  4. デジタル化:MES/SCADA/クラウドへの接続、サイバーセキュリティ、遠隔保守。

  5. 環境・省エネ・LCA:CO₂、水、廃棄物、薬剤、騒音――“環境KPI”が選定基準に。

  6. サプライチェーンの不確実性:代替部品設計、ローカル調達、納期リスクの可視化。


2|セグメント別「ニーズの翻訳」早見表

半導体・二次電池

  • 微振動/温湿度/パーティクル管理、トレーサビリティ、クリーン施工、短工期の量産立上げ。

食品・医薬

  • 洗浄容易性(CIP/SIP)、デッドスペース最小、異物混入ゼロ、バリデーション(IQ/OQ/PQ)。

物流・FA

  • 多品種・変動対応のリコンフィグ、AGV/AMRとの連携、保全のリモート化。

データセンター/インフラ

  • 冗長化とホットスワップ、PUE/電力効率、夜間切替で“止めない工事”。

再エネ・環境

  • 腐食・耐候、遠隔監視、系統連系/安全協議、保全アクセスの設計。

汎用産機(成形/加工/プレス等)

  • 省エネ(サーボ化/回生)、段取り短縮、金型/治具のデジタル管理、AI外観検査との親和性。


3|“多様化”に効く設計レバー

  1. プラットフォーム化×モジュール化

    • ベースシャーシ共通、I/O・駆動・安全・洗浄仕様をモジュールで差し替え。

  2. コンフィグ設計

    • Web/3Dコンフィギュレータで型式×オプション×法規を自動整合、BOM/図面へ直結。

  3. ソフトウェア定義

    • レシピ/段取り/安全パラメータをファームウェアで切替、現地改造を最小化。

  4. センサー前提のヘルス設計

    • 振動/温度/圧力/電流の埋込センサー+診断アルゴリズムでCBM(状態基準保全)へ。

  5. 洗浄・保守の“アクセス設計”

    • 工具レスカバー、ドレン性、排液ルート、保守MTTRの低減を最初から盛り込む。

  6. 環境と安全

    • 低騒音、低薬剤、飛散/漏洩対策、**機能安全(PL/SIL)**を構造で担保。


4|提供モデルの多様化:製品+サービス+データ

  • EaaS(Equipment as a Service)/成果連動:稼働率・スループット・消費電力をKPIに課金。

  • 予知保全(PdM):ダッシュボード提供、SaaSで異常検知、部品先出し

  • 遠隔立上げ/教育:AR支援/デジタルツイン、施工/運転/保全のeラーニング。

  • 補修部品DX:型式・シリアル・図番紐づけ、在庫・納期・互換を即提示。

  • セキュリティと運用ルール:VPN/ゼロトラ、権限/ログ/パッチまで含めた提案。


5|“多様化”の現場を回す運用の要点

  • デジタルスレッド:受注→設計→製造→据付→運転→保全→更新のID一元管理

  • ITP(検査計画)とトレーサビリティ:計測器校正、材料証明、結線/トルク/圧力試験の記録。

  • ローカル適法性:電気/圧空/圧力容器/食品接触材/騒音など国・自治体ごとの適合

  • サプライチェーン冗長:代替部品、2ndソース、設計レンジの明確化(互換と性能影響)。


6|KPI

  • 受注から立上げまでのLT/変更リードタイム

  • 一次合格率(FAT/SAT)/現地手戻り率

  • OEE/稼働率MTBF/MTTR/予知保全の的中率

  • エネルギー原単位CO₂/LCA指標

  • 法規監査の不適合件数

  • EaaS継続率・NPS/部品出荷リードタイム


7|ショートケース

A|食品充填機:洗浄時間−40%

  • 施策:CIP前提の配管再配置、死角ゼロの溶接、レシピ自動洗浄。

  • 成果:段取り短縮+衛生リスク低減、夜勤要員を1名削減。

B|成形機:省エネ+品質安定

  • 施策:サーボ化と回生、金型温調のモデル予測制御。

  • 成果:消費電力−18%、寸法Cpk向上、段替え時間−25%。

C|搬送ライン:変動需要への追随

  • 施策:AGVとモジュラーステーション、HMIコンフィグ、ノーコードレシピ。

  • 成果:新製品切替が日→時へ、OEE+6pt。


8|90日アクション

  1. “モジュール表”の棚卸し
     駆動/安全/洗浄/計測/I/Oを標準モジュール化し、変更箇所を最小化。図番・BOMを更新。

  2. ITP&台帳の一元化
     FAT/SATのチェック項目、材料証明、計測ログを案件IDで紐づけ。監査対応を即時化。

  3. EaaS/PdMの試験導入
     上位顧客1社で遠隔監視+予知保全+部品先出しをパイロット。KPI(ダウンタイム/消費電力)を合意して検証。


9|多様化は“複雑化”ではなく“設計機会”

産業用機器の価値は、単体性能だけでなく、現場への馴染み方(据付・洗浄・段取り・保全)とデータでの再現性に移っています。
プラットフォーム化×ソフト定義×運用DXで、顧客ごとの“違い”を設計とサービスで吸収する。これが、多様化時代の勝ち筋です。

まずは、

  • モジュール表の標準化

  • 検査と台帳の一元化

  • 小さなEaaS/PdMの実証

この三手で、開発も現場も“速く・確かに・続けられる”体制に変わります。多様なニーズは、あなたのプロダクトを次のフェーズへ押し上げる起爆剤です。

 

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