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月別アーカイブ: 2025年8月

第20回産業用機械雑学講座

皆さんこんにちは!

TMA株式会社、更新担当の中西です

 

さて今回は

~“誤動作しない機械”の作り方~

 

現場で発生する謎の誤動作…その多くはノイズ(EMI)とアース設計が原因。この記事では、ケーブル分離・シールド・接地・フィルタ・VFD対策まで、制御盤と機上配線の実務ノウハウを凝縮します。🧠


1. まずは分離:電力と信号のレーンを分ける 🛣️

  • パワー系(インバータ出力・ヒータ・ソレノイド)と信号系(I/O・エンコーダ・通信)はダクトを分離

  • どうしても近接する場合は仕切り板+短区間だけ直角交差

  • ケーブルタイは金属台座+導通でシールドの効果を邪魔しない。


2. シールドの基本:360°接地が効く 🛡️

  • 編組シールドは端末で360°クランプ(ピグテール1本だけより効果大)。

  • シールドの接地点は原則片側(低周波ノイズやグランドループ回避)。高周波ノイズが強い環境では両端接地+片側RCなど“現場最適”で。

  • コネクタ金属殻はパネルと密着、塗装面は座面を剥離して導通を確保。


3. アース設計:一点接地 vs 多点接地 🌎

  • 一点接地(スターアース):低周波の電位差トラブルに有効。制御0V・シールド・筐体をアースバーに集約。

  • 多点接地:高周波対策で有利。盤内の主要点に短く広い導体で接地。

  • 等電位ボンディング:機械フレーム・盤・ロボットベースを太いアースバーで一括接続。


4. インバータ(VFD)とサーボのノイズ対策 🌀

  • モータケーブルは**専用品(遮蔽・対撚り)**を使用、最短経路・別ダクトで敷設。

  • 出力フィルタ/コモンモードチョークをインバータ直近に。

  • サーボのエンコーダ線はモータ線から十分離隔

  • ブレーキ抵抗・RCDは発熱/サージを見込んだ配置・離隔で🔥


5. フィルタ&サージ:入口と出口を固める 🚪

  • AC入力にはEMIフィルタを電源入口すぐに。線長を短く。

  • DC24V系にはコモンモードチョーク+バイパスCでスパイク抑制。

  • サージ保護:リレー・ソレノイドはダイオード/CR/バリスタを負荷側に。表示灯の誤点灯を防止。


6. 配線ディテール:小さな差が大違い ✨

  • ループを作らない:配線は行って戻る“面積”を最小化。

  • ツイスト:差動・信号ペアは一定ピッチで撚る(ねじれ過ぎ注意)。

  • 端子台:信号端子はスプリング式で微振動対策、電力端子は圧着+規定トルク

  • 結線色:アース(緑/黄)、DC24V(+と0Vは対色)など社内ルールを徹底。


7. 盤内熱とノイズは仲良し?🌡️

  • 高温はノイズ耐性を下げる。インバータ・電源は上方に熱溜まりを作らないレイアウト。

  • 吸排気の流れを矢印で明示、フィルタは点検周期を設定。

  • 温度上昇が厳しい盤はファン故障検知や温度アラームを付加。


8. 通信・センサの信頼性UP 💬

  • 産業ネットワーク(Ethernet系/フィールドバス)は指定ケーブル・コネクタを厳守。

  • 近接・光電・アナロググランド分離(A/D共有0Vの落ち注意)。

  • リファレンス配線:4–20mAは2線/3線の取り回しを図面に明記し、誤結線を防止。


9. 検査とトラブルシュート 🧪🔎

電気試験

  • 絶縁抵抗(回路別),保護接地の導通,漏電遮断器の作動

  • 通信品質(ケーブルテスタ/エラーカウンタ)
    ノイズ再現

  • モータ急加減速,ソレノイド連続励磁,溶接機/大電流機器の同時動作
    現場での即応

  • 予備のフェライトシールドクランプアースリードを常備。

  • 事象→発生タイミング→周辺動作をタイムラインでメモ。再現性が鍵。


10. 図面とドキュメント📚

  • 配線図/端子表/ケーブルリストを同一番号体系で統一。

  • 立上げ時の“赤入れ”をAs-builtに反映し、版管理(Rev.)を徹底。

  • 盤扉裏に回路凡例・色規格・アースポイント図を貼付。👀


11. EMC“あるある”チェックリスト ✅

  • 電力/信号の分離ダクト運用

  • シールド360°クランプ(塗装剥離で導通)

  • シールド接地点の方針(片端/両端)を文書化

  • インバータ出力ケーブルは専用品・別経路

  • AC入力直近にEMIフィルタ・線長最短

  • ソレノイド/リレーにサージ吸収器

  • 一点/多点アースの採用根拠とアースバー図

  • 温度・風路・ファン監視の実装

  • 通信指定ケーブル・コネクタの遵守

  • As-built反映と版上げ完了

 

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第19回産業用機械雑学講座

皆さんこんにちは!

TMA株式会社、更新担当の中西です

 

さて今回は

~「止まらない現場」をつくる~

 

産業機械の品質は、最終検査ではなく工程内で作りこむもの。この記事では、段取り・工具管理・配線・締結・検査を一気通貫で標準化するための実務ポイントと、そのまま使えるチェックリストをまとめました。⚙️


1. 段取りが8割:作業設計の基本 🧩

  • セル/ライン設計:タクトに合わせて「組立→配線→検査」をU字配置に。

  • キッティング:1台分の部材を色付きトレイで区分。部品の取り違いを予防。

  • 作業票:写真つきSOP、トルク値欄、注意マーク(⚠️)で“迷わせない”。

  • 5S+FOD対策:配線端子のカス・結束の切れ端はFODボックスへ。🧹


2. 工具管理:トレーサブルな精度 🔩

  • トルク管理:締結箇所に規定トルク・レンジを表記/電ドラはカウンタ付きで回数管理。

  • 校正:トルクレンチ・メガー・絶縁抵抗計は校正ラベルと有効期限を明示。

  • ESD/帯電対策:リストストラップ、ESDマット、導電靴。導通チェックを朝礼で✅


3. 締結の鉄則(ゆるみゼロへ)🧱

  • ねじの基本:清掃→仮締め→対角本締め→トルクマーキング(ペイント)

  • 緩み止め:ばね座金・ねじロック剤・二重ナットを用途で使い分け

  • アルミ/樹脂座面保護と過トルク注意。カラー/ワッシャで応力分散。


4. 配線の設計と取り回し 🧵

  • ルーティング:電力(モータ/ヒータ)と信号(I/O/センサ)は物理分離。交差は直角に。

  • 曲げ半径:一般ケーブルは外径の5〜10倍を目安に(無理な折れを作らない)。

  • 束ね方:最初は仮結束→通電テスト→確定後に本結束(インシュロックの切り口は面一)。

  • ラベリング:線番チューブ/熱収縮で両端表示。端子台も回路ごとに色分け。

  • 端末処理:より線にはフェルール推奨。圧着後は引張テスト(軽く引いて抜け無し)。


5. 盤内・筐体の“見える品質” 🗄️

  • ダクト:配線は8割以下の充填率に。余長はダクト内で波打たせずストレートに。

  • 端子高さ:圧着端子はネジ頭の高さを揃え、絶縁ブッシュで短絡防止。

  • 配線色:電源(L/N/PE)・制御・フィードバックは社内規格で統一(凡例を盤扉裏に貼付)。

  • 可動部:キャリアチェーンはストローク中央で余長を確保、擦れ対策を。


6. 安全第一:感電・挟まれ・火災を防ぐ ⚠️

  • ロックアウト/タグアウト(LOTO):電源遮断→鍵管理→タグ表示🔒

  • 配線保護:エッジ部はエッジガード、高温部は耐熱スリーブ

  • 防火:ヒータ・SSR周りは耐熱導体・耐熱端子/発熱部に離隔通風を。

  • 人の安全:回転部・昇降部はイエロー/ブラックの注意表示、非常停止は手の届く範囲に🔴


7. 検査:“通電前・通電後・機能”の三段ロケット 🔍

通電前(無電)

  • 端子増し締め、誤配線チェック(導通)、絶縁抵抗(メガー)📏
    通電後(有電)

  • 相順・電圧降下、漏電ブレーカ作動、アクチュエータの空運転
    機能試験

  • I/Oマッピング照合、インターロック、非常停止復帰、異常シナリオ試験

異常時は**“いつ・どの工程・誰が・どの部品”**まで遡れる記録を残し、是正→再発防止を文書化します。


8. 品質KPIと見える化 📊

  • 一次合格率(再手直しなし)

  • トルク不良/1000点、誤配線/1000端子

  • 検査タクト、初期故障率、手戻り時間

  • 盤内温度・フィールドクレーム件数(カテゴリ別)


9. そのまま使えるチェックリスト ✅

  • LOTO実施/電源表示

  • 締結トルク記録/ペイント確認

  • ケーブル曲げ半径・固定間隔

  • 電力/信号の分離・直角交差

  • 線番両端表示/図番一致

  • メガー値合格/端子増し締め

  • 非常停止・インターロック試験

  • 図面“赤入れ”反映→版上げ完了

 

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